DANCE GALLERY 10
『Portia’s Gift』
2012.7.14
空想と現実
雲を見て登場人物を作り上げて自作の物語を母に聞かせる、洞窟で泣いている犬の親子の絵を描きながら自分も泣けてくる、夢の家の平面図を何十枚も書く、家の前の公園の地面いっぱいに絵を描く…幼年期の私はいつも空想の世界で遊んでいたようです。過敏な幼い私にとって優しく美しく劇的な世界は必要だったのかもしれません。現実の人たちは自分を傷つけますし、自分も誰かを傷つけます。バレエのレッスンなどは現実そのものの社会です。眼に見えることを確実に実現させるための訓練を何度も繰り返します。空想だけでは体を動かすことはできません。汗を流して小さな挫折を知り、他者に叱られる経験をして、自分の都合の良い世界ではなく、現実の世界を生きることは空想をさらに鮮やかにするのだと理解したのです。その後成長するたびに現実の素晴らしさを知り、現実の世界で生きていく自信を培いました。新作発表の場であるダンスギャラリーは10回目を迎え、ひとつの節目と思い、過去の9作品へのオマージュとして構成、演出しました。今までの作品はすべてオリジナルですので、一つ一つの作品は昔出会った写真であったり、ふと目にした絵画であったり、夢でもあるのです。
それは私自身の思考であり感性の上に成り立っています。そしてそれらの場面ひとこまひとこまが私の感性というフィルターを通して作品になっているのです。
いつか他者の物語を舞台にすることもあると思いますが、それも私の思考や感性を通して理解したものなので、やはり私という色の作品になるでしょう。そして生徒たちが現実に訓練して表現する舞台は私の空想を目に見えるものに変えてくれます。
公演にあたり、様々な面で惜しみないご協力、ご尽力を賜りました皆様に深く感謝いたします。
photo:テス大阪